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師弟 [責務]

数年ぶりに中学時代の友人が電話してきたのが土曜日・・・。
翌日の日曜日に2人で中学時代の恩師の下を尋ねることにした。
中学2・3年という多感な時、担任として部活の顧問として、この人からはいろいろ教え込まれた。

どちらかというと理屈は後回しで、体に叩き込んだ感が強い教えだったように思う。
だからとにかくよくこの人には殴られた。

今の世の中であれば、速攻で問題視される教育方針だったろう。
しかし、両親は文句ひとつ何も挙げることはなかった。
当時の私達にしてみたら、両親よりも恐ろしい存在だったことは言うまでもない。

成人してまもなく両親になぜ文句を言わなかったのか聞いてみた。
両親曰く・・・
「土曜日も日曜日も365日のほとんどを費やして指導してくださる先生に、
何が言えるのか?煮るなり焼くなり思うとおりに指導してくださいと中学一年の父母会でお伝えした位だ。」

あの時代、高度経済成長の真っ只中で、ひたすら働き続ける両親の心境が伺え、
私は何もいえなかった。

先生は突然尋ねても嫌な顔ひとつせず、迎え入れてくれた。
2年前に教師を定年退職され、今は隠居のみである。
先生のもとを訪問する生徒はあとを絶たないらしい。
彼が高校へまたは世の中へ送り出した生徒の数は膨大な人数になる。
声を聞けば大体誰かわかるという。(本当なのかは定かではないが・・・)

奥様曰く、今も生徒の心配ばかりで困りますと言わしめるほど、一生教師を貫かれているらしい。
私達2人はそれを聞いて、うなずくだけである。

2人して近況を報告すると、
当時3馬鹿と評されていたうちの2人が全うに働き、家族を持ち、生活していることに
とにかく驚かれていた。

我々はどんなに歳を重ねても、先生の前ではいつまでも、丸刈り頭の生徒なのである。

当時、朝昼夕夜と1日9時間近く練習に明け暮れた・・・・毎日である。
今思えば、狂人的な練習メニューである。

先生曰く、とにかく心配したのは日々成長し、超人的な体力を身に着けた私達がスピンアウトして
競技(バスケットボール)ではない別の方向に、身に着けた力を使うことだったらしい。
20分間のハーフを全力で走り、飛びゴールを競う。
私達の体力と技術は、私立は別にして国公立でぬくぬくと練習している高校生を凌ぐほどだった。

日々鍛えていない普通の生徒や不良を相手に、使えば相手を殺しかねないほどの破壊力がある。
そう先生が心配するのも、いまならうなずける。

そんな心配を抱える先生が方針は、死ぬほど練習して僕達の溢れる体力をぎりぎりまで削ることだった。
どんなにピカピカで高性能なエンジンをもつ肉体も、燃料となる体力というガソリンが切れてしまえば、
機能しないのを知っておられたからだ。

先生の作戦はものの見事に的中していた。
毎日限界まで絞られた私達は、体力がからからになってしまうから、体力を補給するためにまっすぐ自宅に帰る。
そして風呂に入る。
燃料を補給し、体が温まったら、消耗した体を再構築するために強烈な眠気が襲う。
やむなく、寝てしまい翌日となる。
勉強もさることながら、遊ぶ意欲など入る余地も無いのである。

そんな毎日の繰り返しであった。

2人して先生といろいろ話したが、一番印象に残った一言は・・・
2人の目を見据えながら・・・顔は笑顔なのに目だけは当時の鬼教師の眼差しだった。

そして・・・
「お前達力を出し惜しむなよな!」
「お前達にはそれを教えたし、理解しているし、体験しているはずだ」
「俺に同じことを2度言わせるなよな!」

まるで呪文のように、体の中に入り込んで浸み込んでいく。
言葉の意味とか、その言葉自体がどうこうではない。
熱い物がするりと入り込んできて、体を突き動かしていくような、そんな感覚に襲われる。
まるで厄払いしたかのように、なぜか体も軽い。
不思議なものである。

私の体と精神は、いたって単純なつくりなのだろう。

おかげで今日は、天気の晴れ間のように清々しい。

たまには、こういったのもいいな!と思う今日この頃でした。
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